平成19年度全国優良畜産経営管理技術発表会 経営部門 【愛媛県】

未利用資源の有効活用で
合理的な養豚経営
‐加工・レストラン開業で尽くす養豚振興‐

有限会社 カワタキ


養豚

↑(有)カワタキのレストラン
1.地域の概況
 西条市は、愛媛県の東部に位置し県都松山市から東へ50km。平成16年11月に旧西条市、東予市、周桑郡小松町、丹原町の2市2町が合併して誕生した。自宅は西条市西部の旧丹原町にある。豚舎は川根農場と田滝農場の2か所にあり、繁殖部門と肉豚部門に分離している。レストラン・ハム工房も自宅から5分の範囲である。

 市の総面積は509?で可住地は約30%の154?で、残りが林野となっている。総人口は116,059人(H18.11.1日現在)である。瀬戸内海特有の温暖な気候条件に恵まれている。
 南部には西日本最高峰の石鎚山(標高1982m)を中心とする石鎚連峰があり、急峻な山岳地帯となっている。また、山岳部を源流とする中山川、加茂川等の主要な河川が市内を流れており、豊かな水資源に恵まれ、平野部には市街地が構成されるとともに、沿岸には大規模製造業を中心とする工業地帯となっており、混住化が進展している。
 
 西条市の農業は平成17年農業センサスによると農用地面積は6,260ha、農家戸数5,322戸のうち専業農家は1,143戸である。平成18年2月1日現在での畜産農家戸数は、酪農12戸(1,250頭)、肉用牛28戸(1,540頭)養豚28戸(37,900頭)、養鶏15戸となっている。
 農業粗生産額は152.9億円で県内の11.2%を占め、主に畜産50.7億円、米麦38.8億円、野菜36.5億円、果樹13.9億円等となっている。平野部は県下有数の穀倉地帯で米麦を中心に野菜・花卉などの施設園芸や豚、採卵鶏等の畜産業も盛んである。山麓部は柿、柑橘を主体とした果樹地帯となっている。

  

2.経営の概況

(1)労働力の構成

区分

経営主との続柄

年齢

農業従事日数(日)

部門または作業担当

備考

 

うち畜産部門

 

 本人

 53

280

200

総括

代表取締役

構成員

 妻

 52

200

100

店舗

取締役

 

 

 

 

 

 

 

従業員

 長男

 26

300

300

農場

場長

 長女

 25

250

 

店舗

 

 二女

 22

250

 

店舗

 

従業員

 

300

300

農場

 

従業員

 

300

300

農場

 

従業員

 

300

300

農場

 

従業員

 

300

300

農場

 

臨時雇

のべ人日                11人

店舗3人

臨時8人店舗


  
(2)過去5年間の生産活動の推移

 

平成14年

平成15年

平成16年

平成17年

平成18年

畜産部門労働力員数(人)

4

4

5

5

5

飼養頭羽数(頭・羽)

262

271

267

254

262

販売・出荷量等(t・kg・頭)

5,279

5,295

5,017

4,643

4,645

畜産部門の総売上高(円)

156,128,570

160,412,612

157,207,871

150,570,477

157,403,551

 

肉豚売上

154,241,822

158,473,786

155,075,000

147,799,316

154,063,728

3.経営・活動の推移

年次 作目構成 飼養頭数 経営・活動の内容
S47 養豚 種豚1頭 高校生で飼育始める
S51   種豚15頭 本格的に養豚経営に取り組む
S54   種豚70頭 川根農場建設
S63   種豚150頭 田滝農場建設
S52〜H3     鉄骨平屋・木造平屋2,644uを49,533千円で建築
S54     愛媛県家畜改良共進会農林水産大臣賞受賞
H1     縦型密閉発酵機18ET6,104千円
H4     種豚220頭 (有)カワタキ設立、資本金500万円
四国養豚生産組合設立
H7     加工研修開始、食品衛生管理者資格取得
H11   種豚250頭 長男入社
レストラン・加工所624u建設62,020千円、厨房加工機器一式25,891千円
H12     レストラン「ももくり三年かき八年」開業
H14     種豚262頭 縦型密閉発酵機36ETリースで導入
H15   種豚271頭 豚舎(鉄骨平屋560u)10,563千円
堆肥舎120u(鉄骨平屋)2,884千円
自動給餌機、粉砕機、飼料配合機の購入自家配合の徹底
H17   種豚254頭 飼料攪拌施設288u(鉄骨2階)
H18   種豚262頭  
H19   種豚260頭 現在に至る

4.経営・生産活動の内容

(1) 経営管理
平成4年に飼養技術の向上や競争力の強化のため養豚業を営む有志6人で「四国養豚生産組合」を結成し、以来月に1回経営・技術成績等の検討会を実施している。

経営管理はパソコンを利用し、分娩頭数、離乳頭数、種付頭数、事故頭数等技術的なデータを毎日入力し、いつでも把握できるようにしている。飼料や飼養頭数は月末棚卸後に入力をする。生産組合での検討会では、集計した成績を編集して各人が理解しやすいように様式を統一し、他経営との比較により生産性の向上を図っている。

(2) 生産技術
@ 飼料給与方法の特徴
種豚の育成豚は肥育用の飼料を不断給餌し、体重130kgまで育ててから繁殖豚舎に移動し種付けしている。やや太り気味で初産を迎えるが問題なく、授乳中の乳の出も良く、2産目に体力が残っているため成績も良い。
肥育豚は出荷2ヶ月前から麦類を配合した独自のブレンド飼料を給与飼育し仕上げている。このことは肉質の向上にもつながっている。

A 繁殖育成技術
繁殖は、暑さとの戦いである。豚の首に水滴を落とすなど防暑対策(ドリップクーリング)を行っている。また、隣接の廃業した、豚舎を借りて、スペースを広く確保し、夏場には種付け成績が落ちても生産量が減らないように年間出荷目標を5,400頭とし毎週104頭の出荷ができるように種付け頭数を調整している。

B 衛生管理
衛生管理は消毒を基本とし、疾病予防には基本的にはワクチンを接種している。抗生物質についてはポジティブリスト制度が実施されているため、以前にもまして注意をしている。飼料には乳酸菌等の微生物資材を添加し、有機酸(木酢等)で環境改善を図っている。その他、肉豚の疾病対策としては微生物資材のほか、植物性アミノ酸を給与するなど、体力をつけて予防することに重点を置いている。飼養密度について夏場は少なく、冬場はやや多くするため、換気扇や自動カーテンを導入し、温度感知器で開閉し室内温度を取りながら換気を行い、環境を整えている。

C 飼養管理上の工夫
母豚は、種付けした順番に並べて、出産時期がわかりやすく従業員も認識しやすくしている。流産等の事故や再交配等があれば、そのストールは空室となるので、豚舎に入ると成績の悪い時は一目でわかる。豚舎の作業は年間を通じて決めており、誰が作業しても効率的に作業できる体制を整えている。このため、従業員が当日の作業を認識しておりスムーズな作業が行える。

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日 日曜日
種付け
妊娠確認
種付け
出荷
移動
種付け
機械の
点検等
離乳
母豚移動
分娩
消毒等
分娩 分娩

E飼料費の節減対策
米糠等の単味飼料の購入において電話交渉による入札仕入れの実行、丸粒トウモロコシの利用により価格の低減を図っている。また、未利用資源の活用としてパン粉等のエコフィードにより価格の引き下げを行っている。その結果、肉豚1頭当りの飼料費は11,789円、枝肉1kg当りでは165円と節減効果が出ている。

従来は肥育にも配合飼料を給与していたがミルクを除き、自家配合に切り替えている。飼料混合機械を導入し、1週間に45tを製造しており、原料は大型トラックで搬入している。エコフィードは時期によってパン粉や糠などの配合割合が変化するが、自家配合飼料の設計を毎回行うことにより、価格の低下と品質保持に努めている。
 
(3) 加工販売による収益性の向上
愛媛県家畜改良共進会で農林水産大臣賞を受賞したこともあり、豚肉の品質には自信があった。レストランの開店を目指して、平成7年から従業員を研修させ、加工方法や食品衛生管理の資格を取得させた。加工やレストランのメニューなど試行錯誤を繰り返し、どこに出しても恥ずかしくない、美味しいメニューができた。レストランで使用する豚肉は自分が育てたもので、食品会社でと殺、解体を依頼し、ブロック肉で加工施設に搬入している。一方、野菜は地元の直売所で仕入れた地域食材を利用し、地産地消を努めている。

レストランとハム工房は同じ建物にしたことで、レストランで食事をした客が土産に買って帰ることが多く、相乗効果を生んでいる。労力面でも効果があり、レストランは、土日にお客さんが集中する。そのため従業員には平日にハム工房のパック詰めや発送、棚卸などを行ってもらい労力のバランスを取っている。

当社はホームページも作成しているが、1番の宣伝は口コミであった。また、マスコミの取材に応じ、旅行雑誌や広告に載せるなどの宣伝も実施している。関西等のデパートなどからも引き合いがあるが労力やコストがかかるため直売のみに限定している。

@ ハム・ウインナー等の加工販売所「坊ちゃんハム工房」を開業し収益性の増加に寄与している。
A レストランの経営による収益性の増加、「ももくり三年かき八年」を開業する。
B レストランの経営年間310日の稼動で9,000人を越える集客となっている。加工の体験についても希望に応じて1回約20人程度が可能である
C レストラン、ハム工房の年間売上高は平成16年28,723千円、17年27,618千円、18年24,380千円

5.地域農業や地域社会との協調・融和のために取り組んでいる活動内容

(1)養豚関係では「四国養豚生産組合」の組合長として経営技術指標の分析により、皆が儲かる養豚を志し、肉豚出荷、飼料購入の交渉等を行うなど、スケールメリットを生かしている。
愛媛県農業法人協会の副会長を務め、農業法人の先進的な考え方と活躍に感銘し相談しながら経営を行っている。また、全国養豚経営者協議会の常任理事や日本養豚事業協同組合の監事も務めている。このようなことから、全国の情報を地域へ、また、地域情報を全国へ発信して養豚の振興のために尽くしてきた。

(2)糞尿処理については縦型密閉発酵機械2台(18ETと36ET )を設置し、分離後発酵処理を行い、柿やアスパラガス等の栽培を主体とする隣接果樹・野菜農家に無償で配布している。
品質が良好で地元農家には人気があり、生産が追いつかないほどである。

(3)長男は周桑地区青年農業者連絡協議会の畜産実践班長も経験し、現在は実践班員として活躍している。畜産実践班はたい肥の利用促進についてのプロジェクト研究を進め、平成16年には愛媛県農林水産賞を受賞している。

(4)地域の住民が中心となって「カワタキを励ます会」(会員24名)が発足し、地域住民の交流の場として毎月交流会がレストランで開催されている。

(5)近辺の小学生・中学生の職場体験学習の受け皿となって、レストラン・加工調理場での体験学習やウインナー作りの体験を通じて食育を実施している。参加した子供1人1人に、地元で生産された豚肉に親しみを持ってもらうために、調理体験は1回に4〜5人のできる限り少人数で行うようにしている。

6.今後の目指す方向性と課題

1.生産部門については母豚頭数を常時300頭の飼育とし、肉豚出荷頭数は6,000頭を目標に努力する。そのための豚舎等の増改築も計画している。
技術面では生産性の向上として。飼料要求率は3.5以下、事故率ついては離乳から出荷までを3%以下にする。離乳時の育成率も92%を目指して努力する。

2.加工部門については、現在の加工量は肉豚出荷頭数の5%程度であるが、今後は10%を目標に取り組みたい。また、食育が色々と取りざたされているが、小学校・中学校との教育の一環として協力できるところから実施したい。

3.レストランでは現状の販売金額が大幅に増加することは困難と考えられるが地域の集会場的な役割を果たす。
7.事例の特徴や活動を示す写真

↑越智社長

↑育成豚舎(発酵床)。中央木箱は保温箱



↑自家配合タンク

↑縦型密閉発酵機



↑カワタキのホームページ