『改』
―牛群検定が支えた酪農経営―

入船 福男、サエ子


酪農

1.地域の概況
 
牧場のある町は、愛媛県南部の城川町で、県都松山市より国道56号線を南下、五十崎町より県道229号線に入り、肱川町から国道197号線を日吉・須崎方面へ所要時間90分、高速道路を利用すれば60分(約73km)の1日行動圏内にある四国山地の麓に位置します。城川町は、奥伊予「城川」で、県内は名が通っていて、特に全国かまぼこ絵大会と牛のしろかきの御田祭りが有名で、県内各地より来町者があります。また、四万十川流域の付近に位置しているのと、最近の田舎ブームもあり、都市部からの観光客も増加傾向にあります。町の人口は4,400人・面積127ha・総面積の82%が山林・40%が500m以上を占める農畜産業が中心の町ですが、酪農家戸数は7戸・飼養頭数326頭と年々、後継者不足や高齢化が進み酪友の減少が見られます。

 本地域は愛媛県南部中央に位置するみかんの町・明浜町、田園の町・宇和町、四国の軽井沢・野村町、奥伊予・城川町、及び西宇和郡の三瓶町の5町が平成16年4月に合併し西予市となった。新市の面積は約515?と県内でも有数の広さを誇っている。

 当市の農業は米、畜産、果樹など多様な作物が展開されている。しかし、農業就業者数は減少しており、農家戸数は平成12年の4,896戸から平成17年4,569戸と906戸(6.7%)の減少となっている。農業粗生産額についても農産物の価格低迷もあって停滞傾向にあり、農業就業者の高齢化や後継者不足とともに大きな問題となっている。

 このような情勢において、平成16年度の農業粗生産額は1,327千万円でそのうち耕種が643千万円(内米168千万円、野菜146千万円、果樹246千万円)、畜産は684千万円(肉用牛128千万円、乳用牛247千万円、養豚243千万円)の51%を占めている。また、愛媛県の畜産の粗生産額302億円に対して22%となっている。特に乳用牛は46%と非常に高いウェイトを占めているため愛媛の北海道とも言われているほどである。
 なお平成18年2月1日現在の家畜飼養頭羽数は乳用牛が107戸の4,450頭(県内の47%)、肉用牛101戸7,260頭(県内の40%)、豚では34戸46,300頭(県内の21%)と飼育頭数も非常に多く畜産が主要産業となっている。
 
 畜産物の国際化の進展が急速に進む中で、畜産経営では自給飼料の生産基盤強化が図られている。東宇和酪農ヘルパー利用組合も設立されており、ゆとりある酪農経営を目指している。


2.経営の概況

(1)労働力の構成

区分

経営主との続柄

年齢

農業従事日数(日)

部門または作業担当

備考

 

うち畜産部門

家族

本人 54 330 330 ふん尿処理・搾乳・粗飼料生産

53

270

270 搾乳・飼養管理・子牛飼養管理

長男 28 330 330 飼料給与
長男の嫁 27 50 50 哺乳
75
臨時雇 ヘルパー 28 28 飼料給与・搾乳
  
(2)過去5年間の生産活動の推移

  
平成13年
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
畜産部門労働力員数(人)  3 3  3  3  3 
飼養頭数(頭) 45.7 51.2 50.8  53.3 57.3
販売・出荷量等(kg) 414,277 479,772 457,267 499,201 554,874
畜産部門の売上高(円) 43,238,542 48,934,375 46,834,375 50,993,221 56,641,535
 うち主産物の売上高(円) 41,509,542 46,977,375 44,961,375 48,921,221 54,377,535
3.経営・活動の推移
年次 作目構成 飼養頭数 飼料作付
面積
経営・活動の内容
S34年
乳牛・米・
タバコ
1頭
稲藁・野草等
タバコ30aと米50aの複合に加えて乳牛の飼育を開始
S45年
高校卒業・北海道に実習・研修
S48年
20頭 タバコの裏作として作付け
北海道で2.5年間研修後就農、旧牛舎建築(294u)し規模拡大
S49年
ブロックサイロ50m3、トラクター購入
S50年
乳牛・米 30頭 200a
〈100a〉
規模拡大、牛舎増築、転作田の活用
サイロ50m3と20m3×5を建設
S50年
結婚
S53年
トラクター32馬力を購入
S56年
牛群検定事業加入
S58年
乳牛専業 35頭 バケットミルカー更新(サージ)
H2年 熊本全共出品 未経産牛1頭
H8年 45頭 牛舎新築400u(搾乳牛48頭収容)
規模拡大、通年サイレージの開始
パイプラインの設置、トラクター50馬力導入、後継者高校卒業後北海道(久保剛牧場)に研修
H11年
46頭 後継者就農(北海道の研修終了)
H12年
47頭 700a FRP70m3、スチールサイロ70m3の中古を建設、家族協定締結、岡山全共
H14年
52頭 細霧装置の設置による環境改善、後継者結婚
H16年
60頭 エクセレント牛(90点)誕生
H17年
60頭 栃木全共出品第4部、TMRの給与体系(飼料混合機バーチカル10m3、トラクター66馬力、ホイルローダー1m3、フォークリフト購入)
H18年 65頭 認定農業者申請中(後継者)
4.経営・生産活動の内容

(1) 経産牛1頭当りの搾乳量の改善
@牛群検定成績の活用による個体管理の徹底、特に乳房炎に対する徹底治療による乳質向上と廃用の減少に努めた。
A平成11年より後継者が就農し労働力に余裕が生まれ、平成17年よりTMR飼料給与に取り組み1日1頭あたりの飼料摂取量の増加とともに乳量がアップした。
Bデントコーンサイレージの定量給与が乳量のアップにつながった。
  C大型換気扇の設置(8台)と細霧装置(2台)を設置し、環境改善による夏場対策の徹底が、飼料摂取量の低下を防止し、乳量がアップした。
  D消防ホースを利用した胴締めも備えた新型削蹄枠を製作し、牛の転倒による怪我も
なく安全性の高い作業の効率化をはかり、約5時間程度で10数頭の策定をしている。

(2) 畜舎環境の改善
@畜産振興対策事業の利用により、天井の高い、風通しの良い古電柱を利用した搾乳牛舎を新築した。このため分娩間隔が短縮(14.5から13.8)されるとともに事故率も減少した。
A糞尿処理の効率化、バーンクリーナによる除糞に改良したため、従来の方式から比較して省力化が図られている。
B糞尿については固液分離機の導入により全て分離しているため、糞の堆肥化が効率的となった。
C搾乳牛舎の新設により旧牛舎を乾乳牛舎(フリーバーン方式)に改築するとともに、分娩房を設置し事故率の低下に努めた。

(3) 粗飼料の作付面積の拡大
@転作田の活用による飼料作物の作付面積の拡大を図った。
A平成5年に里山開発事業(農地基盤整備)により大型機械が導入されるようにな
り作付面積の拡大につながった。
B平成12年には700aに拡大している。これにより通年サイレージ給与ができるようになった。飼料摂取量が安定し乳量の増加に結びついている。

(4) 家畜の改良
  @育成牛は北海道への預託により足腰の強い、良質の粗飼料を食い込んだ発育の良い育成牛となっている。
  Aこのように育成に経費を費やしているがエクセレント牛(平成16年5月90点、平成18年5月91点)も生み出している。
  B平成14年には四国連合共進会の第2部において最優秀を獲得し、15年にも愛媛県総合畜産共進会において生産局長賞も獲得している。
  C平成18年6月において、経産牛66頭中年間搾乳量(補正乳量)10,000kg以上の牛が20頭(30%)を占めるにいたっている。

  D年度別牛群検定成績

年度

経産牛

頭数

平均乳量

乳脂肪

蛋白

無脂

固形分

平成13年度

45.2

9,165

4.10

3.26

8.76

平成14年度

50.8

9,444

3.93

3.26

8.72

平成15年度

50.4

9,072

3.97

3.29

8.79

平成16年度

53.9

9,261

3.84

3.25

8.75

平成17年度

57.3

9,683

3.78

3.21

8.72

 

 

年度

乾乳

日数

分娩

間隔

初産

月齢

年齢

平均

産次

平成13年度

59

404

24.5

39

2.5

平成14年度

65

429

24.0

38

2.4

平成15年度

70

425

25.9

311

2.6

平成16年度

82

412

25.4

40

2.7

平成17年度

77

421

25.9

42

2.6



(5) 生乳の販売
   東宇和酪農家の生産した生乳は、生協牛乳として、四国管内の消費者に愛飲されている。

(6) 後継者の活躍
  @北海道での研修体験を活かして飼料の検討により、経産牛1頭当りの乳量がアップし、平均産次の延長が経営改善に活かされている。
  A経営管理も若い夫婦が中心にパソコンを活用して徹底する考えである。

5.地域農業や地域社会との協調・融和のために取り組んでいる活動内容

@城川町の農業委員として、平成7年から3期(8年間)にわたり活躍した。
A平成17年度は東宇和酪農経営者協議会の副会長として活躍し、現在は会員として連携強化を図るとともに部会の発展に積極的に協力している。
B野村高校の研修生2名を約1週間夏期講習として受け入れている。
C後継者も東宇和酪農青年部会の委員として城川支部内の酪農家を巡回し、牛舎消毒作業を青年部会員同士で請け負っている。さらに2ヶ月に1回、管内の後継者グループで勉強会や視察研修を実施している。
D乳牛改良検定部会会員として活躍するとともに、東宇和乳牛共進会、愛媛県総合畜産共進会、四国連合共進会等に積極的に参加し、自家牛群のレベルアップに努め、常に上位入賞を果たしている。(熊本全共、岡山全共、栃木全共に出品)
Eヌレ子については東宇和農協育成場との契約で安定的な取引を行なうとともに地域の肉用牛の発展っている。

6.今後の目指す方向性と課題

@平成8年に県の助成により畜舎を建設することになり、フリーストールにするか検討の結果、繋ぎ牛舎に踏み切ったが、今後、省力化と更なる規模拡大を考えてフリーバーン・フリーストール方式の検討が課題となっている。
A現在の経産牛1頭当たりの搾乳量は9,600kgであるが10,000kg以上を目指す。このためにもTMRの内容を検討し質的向上を図る。
B糞は販売していないが、品質の向上を図り処理経費程度は確保するよう努力する。
糞の投入量が反当り10tとこれ以上は投入が問題であり、粗飼料の自給率の向上考えて飼料畑の拡大をする必要がある。
Cなお、現在は生産調整を余儀なくされているが、牛群検定成績の更なる活用による乳質の向上がより重要であると考えている。
D現在F1は10%程度であるが、今後、ETを活用した和牛の生産による所得の増加を得る方策として検討する。
E全共への3回出品しているが残念ながらに上位の入賞を逃がしているのでと入賞を目指す。
F後継者の妻が城川町の道の駅「きなはい屋」に勤務していたこともあり、経理関係は全面的に任せる方針である。
Gすでに4代目が誕生しており後継者となることを今から期待している。このためにも酪農経営を拡大することも考え自己資本の充実に努める。

7.事例の特徴や活動を示す写真